上司を「課長」と呼ぶか、「田中さん」のように名字に「さん」を付けるか。文化庁が2026年10月2日に公表した2025年度の「国語に関する世論調査」では、会社の課長に部下が呼び掛けるとき、名字に「さん」を付けるのが望ましいと答えた人が25.5%でした。
ただし、最多回答は「課長」の62.9%です。「さん付け」が全国の職場で多数派になった、あるいは文化庁が新しい呼び方を推奨した、という意味ではありません。調査が示したのは、望ましいと思う呼び方についての意識です。この記事では、誰がいつ何を調査したのか、社内と社外で呼び方がどう違うのか、読者が自分の職場でどう確認すればよいかを整理します。
文化庁の調査で「名字+さん」は25.5%、最多は「課長」62.9%
文化庁の設問は、「会社の課長に部下が呼び掛けるとき、どの呼び方が一番望ましいと思いますか」というものです。2025年度調査では、「課長」が62.9%で最も多く、「名字に『さん』を付ける」が25.5%、「課長さん」が6.4%、その他・無回答が5.2%でした。
この数字から読み取れるのは、役職名を使う考え方がなお優勢であることと、名字に「さん」を付ける考え方も一定の広がりを持つことです。「さん付けが主流になった」と短く言い切ると、調査結果の中心を外します。
調査したのは誰か、いつの意識か
調査主体は文化庁国語課で、全国の16歳以上で日本国籍を持つ人を対象に、2026年1月13日から3月3日まで郵送法で実施されました。調査対象総数は6,000人、有効回答数は3,777人で、回収率は63.0%です。
したがって、10月2日に発表されたニュースは、10月時点の実際の会話を数えたものではなく、主に年初に集めた回答を公表したものです。また、回答者が会社員だけに限られた調査でもありません。学生や無職の人を含む対象者が、想定した場面でどの呼び方を望ましいと思うかを答えています。
「望ましい呼び方」と「実際に使っている呼び方」は別の数字
25.5%という数字は、「その呼び方を日常的に使っている人の割合」ではありません。設問は、課長に部下が呼び掛ける場面で、どれが一番望ましいと思うかを尋ねています。回答者の意識と、現在の勤務先で実際に交わされている言葉は別です。
たとえば、回答者が「名字にさん付けが望ましい」と考えていても、会社の慣行に合わせて「課長」と呼んでいる可能性があります。反対に、会社がフラットな呼称を採用していても、調査では役職名を選ぶ人がいます。調査結果から個別企業の正解やマナー違反を決めることはできません。
過去より増えたが、調査方法の違いには注意が必要
文化庁の結果概要では、「名字に『さん』を付ける」という回答は過去の調査より増加したと説明されています。文化庁が公表した過去資料では、1996年度は8.8%、2015年度は16.0%で、今回の25.5%はそれらを上回りました。
一方、文化庁は、2019年度以前と今回では調査方法が異なるため、過去との比較には注意が必要だと明記しています。数字が上がったことは確認できますが、「何が原因で増えたのか」「会社の実務がどの程度変わったのか」まで、この調査だけで証明したわけではありません。
20代では「名字+さん」が4割台、年齢差は原因の証明ではない
年齢別では、名字に「さん」を付ける回答が20代で4割台と、他の年齢層より高くなりました。この結果は、若い世代ほどその呼び方を望ましいと考える傾向があることを示します。
ただし、年齢差だけから「若者は役職を尊重しない」「フラットな会社が原因だ」といった説明を導くことはできません。職場経験、業種、会社の方針、過去に受けた研修など、他の要因は調査結果だけでは切り分けられていないからです。
社外の人に上司を説明するときは、社内の呼び方と設問が違う
今回の調査は、社外の人に自社の課長を説明する場面も尋ねています。「鈴木は」と答えた人が37.4%、「課長の鈴木は」が35.8%、「鈴木課長は」が22.3%、「鈴木さんは」が3.6%でした。
社内で本人に呼び掛けるときの「課長」「名字+さん」と、社外の相手に自社の人を説明するときの言い方は、同じルールではありません。社外では自社側の人をどう表現するか、会社の慣行や相手との関係を踏まえて選ぶ必要があります。記事の見出しだけを見て、社外でも「さん付け」が正解になると考えるのは早計です。
職場で迷ったら、まず会社の方針と相手の希望を確認する
実務上、呼び方に迷ったときの優先順位は、会社の規程や研修資料、チーム内の慣行、本人が示している希望です。社内で「さん付け」を統一している会社ならそれに合わせ、役職名を使う文化なら無理に変えない方が摩擦を減らせます。
相手が「さんと呼んでください」と明確に伝えている場合は、その希望を尊重できます。逆に、本人の希望を確認できないまま、調査結果を根拠に呼び方を変える必要はありません。呼称の変更がハラスメント防止や心理的安全性の施策として行われている場合は、人事・管理職が目的と対象範囲を説明することが重要です。
文化庁の発表は、呼び方の法律や全国共通ルールを変えるものではない
文化庁の「国語に関する世論調査」は、国語施策の参考にするため、日本人の意識や理解を調べて公表する統計調査です。今回の発表によって、会社の役職名の使い方、敬語の法律、労務上の義務が一斉に変わったわけではありません。
また、「課長」と呼ぶことが失礼で、「名字+さん」なら必ず適切だという判定もありません。場面、相手、会社の方針によって適切な呼び方は変わります。調査は、呼称をめぐる社会の意識が一つではないことを確認する材料として読むのが正確です。
今回のYahoo!候補はコメント数を入口に、非重複と一次資料で選別した
2026年10月3日18時01分前後、Yahoo! JAPANの経済・国内・IT・科学欄を確認しました。公開コメント1,000件以上の候補は、経済「配膳で『横取り』しゃぶ葉対策へ」3,507件、国内「副首都となる要件 4道府県満たす」3,040件、「予算削減発言 簗農相は辞任否定」1,653件、「衆院の定数削減 自民に先送り論」2,102件、「紀州ドンファンの遺言有効 最高裁」1,355件、「上司を『さん』呼びが増加 調査」2,613件、IT「情報漏えい相次ぐ『異様』と識者」1,024件、「生成AI動画巡り 声優の請求棄却」1,106件でした。科学欄には1,000件以上の候補はありませんでした。
副首都、紀州ドンファン、生成AI音声、情報漏えいは既公開記事との重複があり除外しました。簗農相の発言と衆院定数削減は政治交渉や説明が進行中で、18時時点で確定した制度変更を中心に構成しにくいと判断しました。しゃぶ葉は企業の再発防止策が中心で、公的資料による制度・生活解説の価値が相対的に弱いため見送り、「上司を『さん』呼び」は文化庁の一次資料と独立報道を照合でき、職場での確認点まで整理できるため採用しました。コメント数は利用者の関心シグナルであり、世論全体、事実、政策効果の根拠には使っていません。
確認できたことと、まだ断定できないこと
2026年10月3日時点で確認できるのは、文化庁の2025年度調査において、課長への望ましい呼び方として「課長」が62.9%、「名字に『さん』を付ける」が25.5%だったこと、年齢別では20代の「さん付け」が4割台だったこと、社外に説明する場面では別の回答傾向が示されたことです。
一方、全国の職場で実際に何%の人が「さん付け」を使っているか、増加の原因が何か、今後どの呼び方が主流になるかは、この調査だけでは分かりません。会社のルールや本人の希望を確認し、調査結果を職場の人に押し付けないことが、現時点で確認できる最も安全な実務対応です。
出典
- 文化庁:令和7年度「国語に関する世論調査」の結果について(2026年10月2日)
- 文化庁:令和7年度「国語に関する世論調査」の結果の概要
- 文化庁:平成27年度「国語に関する世論調査」の結果の概要
- 読売新聞オンライン転載:上司を「さん」呼び増加など、2025年度調査の報道
- Yahoo! JAPAN:上司を「さん」呼びが増加 調査(公開コメント数の確認対象)
確認時点:2026年10月3日18時01分(日本時間)。直近24時間・7日・30日の公開記事とタイトル・本文・出典URLを照合しました。本文・タイトル・メタ情報・画像altは日本語で作成し、英語記事・英語テンプレート・Threadsの個人投稿は事実確認に使用していません。
